じーやんの拍子の悪い日々・桂米二

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<<   作成日時 : 2015/06/16 22:32   >>

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≪ネタがつく≫ 〜2012年4月30日付メルマガ巻頭エッセイより〜

落語会で時々ありますね。「あれ? このパターン、さっきも聴いたような気がする」ということが。同じ落語会で前に出た演目と後から出た演目がよく似ていることがあるのです。

もちろん演目を決める時、そんなことがないように番組を決めるのですが、そこは人間、うかっとすることもあります。ボーッとしてる時もあります。開演してから気がついて「えらいこっちゃ」になることもある訳です。

これを我々はネタがつくとか、ネタがかぶると言っております。おんなじパターンが出てくると、楽屋では「ああ、ネタがついた」とがっかりして肩を落としている訳なんです。

ちゃんと注意はしてるつもりです。お酒のネタが二つ出てないか? 「かわり目」と「親子酒」が並んでたら絶対ダメです。「住吉駕籠」も途中で酔っぱらいが出てきますから、当然避けます。

落語には世話焼きが居ますから、やもめに嫁はんを世話するネタもたくさんあります。「延陽伯」「持参金」「不動坊」「嬶違い」などが一緒に出てたらワヤです。「ろくろ首」は婿養子ですが、これももちろんダメ。

他にも奉行が出てくるお裁きもの、武士、子ども、盗人、医者、幇間などの登場人物。それから夢、喧嘩、病気などの状態、状況。はめものに使う曲が同じ等々……。気をつけることはたくさんあります。演目を決める時にその落語のテーマが何かということを常に考えておかないといけません。

中には「池田の猪買い」と「米揚げ笊」みたいにテーマは全然違うのに、途中で道を教えるところがそっくりそのままという意地の悪いものもありますから。

しかし、こういうことは私みたいに無駄に長く噺家をやっていると自然に覚えているものです。身についてます。めったにしくじることはありません。……と思う。

ところが、落語もくせものでして、エッと思うようなところでネタがつくことがあるんですよ。例えば「みかん屋」と「へっつい幽霊」。片やアホがみかんを売りに行く噺、片やへっついから幽霊が出る噺。テーマは違うし状況も異なる。どこがつくかわかりますか?

すぐにわかる方はかなりの落語通と言えますよ。答えはせんち場、便所なんです。持っていた紙を落とすところまで同じです。ま、そこだけですから、気にせずにやればそれはそれで済むことですけどね。

以前は私もそうでした。仕方ないとあきらめて、知らぬ顔でそのままやっておりました。でも最近は違うのです。無駄に長く噺家をやってると、これを逆に利用してギャグにできないかと思ってしまうのです。あざといことです。ずるいことです。正攻法ではありません。それでもやってしまう私をお許しください。

「不定期落語会@太融寺」でのことです。その日は二葉の「動物園」のネタ下ろしでした。客席も楽屋もちょっと緊張感がただよう中、私一人、別のことを気にしておりました。

「トラがつく」

「動物園」はご存じのように、動物園に雇われた人間がトラの皮をかぶってトラになる噺です。トリで私がやる「栴檀の森(別名:ふたなり)」にもトラが出てくるのです。親父さんの昔話、ホラ話で箱根の山にトラが出てくるところがあるのです。しもた、と思ってこれを並べてしまったことを悔やみました。けどそれは一瞬のこと。すぐにこれを利用することを考えた私はあざとい男です。ずるい男です。

「藪の中から飛び出してきたのが、大きなトラじゃ」
「親父さん、箱根の山にトラが居てますか?」
「あんな恐ろしい山じゃ、何が居てよるかわかるかい」

というふうに続けるのですが、ここでこんなことを言うてしまいました。

「ひょっとして、1万円で雇われたトラと違いますか?」

受けたかどころやない。その日一番の爆笑になりました。私はあざとい男です。ずるい男です。

こんなことは年に1回くらいにしておきたいと願う私を尻目に、またネタがついてしまいました。先日の「神宮道上がる下がる寄席@洛東教会」です。福丸君の「米揚げ笊」と私の「住吉駕籠」。何がつくかというと堂島の米相場師です。その米相場師がゲンを気にして下りる、下がるという言葉を嫌うところまで一緒です。「米揚げ笊」は下がると言ってしまって米相場師の怒りを買う噺です。「住吉駕籠」は駕籠から下りろと米相場師に言います。

これは演目を決めた時に気がつかなければダメです。私はよほどボーッとしてたんですな。トラよりも罪が重い。けど私は逆にニヤッとしていました。これも利用してやろうやないか。なんと私は嫌な男なんでしょ。

「駕籠の中で相撲取ったりするさかい、底が抜けてしまいましたがな。とりあえず駕籠から下りとくなはれ」
「何を」
「駕籠から下りとくなはれ、言うてまんねん」
「こら、向こう先見てもの言えよ。わしら二人は堂島の米相場師も数あるけど、その中でも強気も強気、かんかんの強気で通ってるねん。一ぺん乗った相場、途中で下りたことがないというのが自慢の二人じゃ。一旦乗った駕籠を途中で下りるてな、そんなゲンの悪いことができるかい!」

となるんですが、ここで一言入れてしまいました。

「こないだも、米揚げ笊を売りに来た男を、えらい目に合わしたったん知らんのかい!」

メチャメチャ受けましたがな。私はあざとい男です。ずるい男です。卑怯な男です。冷静に考えたら自分を許せません。こういうことは年に2回くらいにしておきたいものです。

さて今度はどこの落語会でこの卑怯な手を使いましょうか。


☆追記☆ 2015/6/16

久しぶりにメルマガ・アーカイブスです。今月4日の「桂米朝落語研究会@安井金比羅会館」でネタがついてしまいました。えっ? 気がつかなんだて? みんなボーッと聴いてはるんやね。

では落語クイズです。この日に出た演目、「書割盗人」「いらちの愛宕詣り」「七段目」に共通して出てくる物はなんでしょうか?

時間がないので答えを言います。箪笥の引き出しなんですよ。私、この日は出番がなかったので楽屋で聞いてて「こんな番組拵えたんは誰や?」と思いましたよ。

……ま、私なんですけどね。おまけにこの後に「代書」も出てまして、これは箪笥ではなくてお仏壇の引き出しが出てまいります。つまりこの日の演目は全部で八つなんですが、その半分に引き出しが出てくる……。猛反省。

反省しながらも、昔、そんなことを書いたなあと思い出し、ここでご紹介する次第です。メルマガ登録されてる方は以前に読まれたと思いますが、そうでない方に初披露いたします。これは今から3年前、大事なお客様に送信しているメルマガの巻頭エッセイです。

写真は「栴檀の森」でトラを差し上げてるところ。決してガッツポーズではありません。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
たんすがつくまでは気がつきませんでした。さすがです。とくに米揚げ笊を売りにきた男を・・・のフレーズは最高です。あざとくありません。こういうの大好きです。昔吉朝さんが、犬の目やってて天王寺詣りでサゲてたのを聞きましたがあの時もびっくりして喜びました。どんどんお願いします。
初代杢兵衛
2015/06/17 08:03
そういう場に居合わせたいですねぇ。
貴重ですもん。

最後に、お客さんに「共通点は、何でしょう?」と
クイズを出されてみては、いかがでしょうか?
ちりとてちん
2015/06/17 20:44

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