桂米朝と「たちぎれ線香」

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ずっと昔からうちの師匠、桂米朝の最高傑作は「たちぎれ線香」と「百年目」と言われてきました。どちらがいいかは意見の分かれるところでもあり、甲乙つけるべきものでもないように思います。弟子にも「たちぎれ派」と「百年目派」があって、これは自分ならどちらをやりたいか、ということなんですが……。

それで言うと、私は「百年目」でして、若干32歳(今57歳)で初演いたしました。もちろん師匠に稽古してもらってます。大勢の弟子の中で最初に手がけたのは私だったのです。どないや? 出来がどうのこうのというのは置いといて……。

「たちぎれ」の初演は45歳(今は57歳と3ヶ月)になってからでした。もうやらないでおこうかと考えたこともありましたが、桂米朝の傑作を弟子としてはやっぱりやってみたかった。もう一つ言うと、演出を変えてやる人もあるので、私は師匠のものをそのまま受け継いで伝えたかったということもあります。それと主人公は若旦那なんだから、私自身が老けないうちに……これはもう手遅れでしたが。

この「たちぎれ」をうちの師匠がこれまでに何回ぐらいやってきたか? はっきりとしたことはわかりませんが、私の思うのには100回近くやってはるのではないかと。ま、すごい数であることには違いないです。「たちぎれ」を100回ですよ。「動物園」や「子ほめ」を100回と違いますよ。

もう25年以上も前のことですが、うちの師匠が正月のサンケイホール「桂米朝独演会」で、3日間連続で「たちぎれ」をやりました。私も舞台袖で3日間すべて聴かせてもらいました。ゾクゾクし通し、至福の40分でした。

最終日の打ち上げパーティーで、この「たちぎれ」は絶賛の嵐でした。皆さん、それだけ感激されたということなんでしょう。

あの頃、大阪で師匠と一緒に飲んだ時、タクシーで帰る師匠を見送ろうと立っている私を、無理やりタクシーに引きずり込み、拉致されるように武庫之荘のお宅まで連行されることがよくありました。そして京都までの終電がなくなった頃にこう言うのです。

「ところでお前、今晩どないするねん?」

そんなもん泊めてもらわなしょうがないがな。

その晩も武庫之荘の師匠宅まで拉致されてしまい、泊めてもらうことになりました。結局、寝酒の相手なんです。寝床に入った師匠は、そばに座ってまだ酒を飲んでる私に向かってボソッとこんなことを言いました。

「わし、今日えらいみんなから『たちぎれ』のことを誉めてもろたけど、わし自身は昨日のほうが出来は良かったように思う……」

どう答えようかとちょっと迷いましたが、正直に言いました。

「私もそう思います。3日間とも全部聴かせてもらいましたが、昨日だけなんです。舞台袖でボロボロ泣いたんは……」

そう言うと、ニコッと笑って「そうか」とだけおっしゃいました。人間国宝のうちの師匠でも、いつもいつも自分で納得ができる出来……というわけではなかったのでしょう。でもその1986年1月3日の「たちぎれ線香」はそれはそれは素晴らしい鳥肌物でした。でもそれはその場に居た人しか知らないんです。所詮は落語って消えて行く芸ですから。

上方落語には東京落語のいわゆる人情噺はありません。この「たちぎれ」はサゲがある落とし噺ですが、立派な人情噺だと思います。なんというても美しいラブ・ストーリーです。ラブ・ストーリーが嫌いな人はいないでしょう。オカマだって嫌いじゃないと思いますよ。

来年はその「たちぎれ」を久しぶりにやらせてもらおうと思います。それでは、どうぞ良いお年をお迎えください。

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この写真は米朝事務所の専属カメラマン、佐々木芳郎氏撮影です。まさに、このサンケイホールでの独演会打ち上げパーティーの後、私はうちの師匠に拉致されたのです。1986年1月4日のことでした。あれから29年か……。

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この記事へのコメント

ちりとてちん
2015年01月01日 14:51
今年も出来る限り追いかけます。
紀ちゃん
2021年04月13日 18:59
左からお二人目が米二様ですよね。
すんごい男前!