米二はん→米二さん(メルマガ・アーカイブス)

≪米二はん≫ ~2012年5月25日付メルマガ巻頭エッセイより~

言葉は難しい。関西弁は難しい。つまり大阪弁は難しい。京都弁はもっと難しい。神戸弁はわかりません。江戸っ子はもっとわからん。

言葉が乱れてると言われて久しいですが、私のような古くて片意地な人間は言葉について気になることだらけ。「ら抜き」言葉も違和感+嫌悪感を感じます。「よろしかったでしょうか?」も「~のほう」も「なります」も嫌いじゃ~!

そうそう、だいぶ前、レンタルビデオ屋で本当にあった一コマを再現してみます。昔、ブログに書いたものですが……。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

某レンタルビデオ屋でCDを5枚借りようと受付へ持って行くと、応対してくれたのは「研修中」が胸に光るお兄さんでした。初々しいね。フリーター?

「会員証のほうお預かりいたします」

会員証は預けてもいいけど「のほう」まで預けないといけないの?

「会員証のほうお返しします」

「のほう」もちゃんと返してくれるんやね。律儀。

「これは見本のほうなので、実物のほうをお取りしてきます」

つまり中身が入ってないので、CDの現物を取りに行ってくれるちゅうこっちゃね。理解するまで10秒ほどかかりました。オレはアホになったんか?

「レンタル期間のほうは、1週間のほうでよろしかったでしょうか?」

やっぱり「よろしかった」がお得意のフレーズなんですね。まともに会話する気にならんのでぶっきらぼうに「当日」と言って、金を払いました。

「おつりのほう、○○円になります」

出た出た。「なります」も。他にも「のほう」を連発してたけど、いちいち覚えてられません。思い切り不機嫌な顔して外へ出ました。

お兄さんの「研修中」がはずれるようになってもこんな言葉づかいやったら、このレンタルビデオ屋へ行くのんやめようかな?

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

転載ここまで。本当にここのレンタルビデオ屋へは行かなくなってしまいました。

さて、ここから本題です。最近、ネットなどで「米二はん」と書かれることがあって、すごく違和感を感じております。「米二はん」なんて言葉は大阪弁に無いもんね。「米二さん」ですよ。「米二さん」と呼んでください。ま、ジーやんでもかまへんけどね。

「おかみはん」なんて言わないでください。「おかみさん」です。「おじいはん」もダメ。「おじいさん」です。つまり、なんでも「はん」を付ければ関西弁らしくなるわけではありません。付けて良い場合と悪い場合があるのです。

今、例に挙げたのは五十音で言うと、敬称が付く直前の字が母音のア・イ・ウ・エ・オのイ段の場合ですね。「じ」「み」「い」の後には「はん」は付きません。「さん」なんです。

慣用ですから例外はあるにしても、他の段もこれに当てはめて行くことができます。

ア段 はん(さんの場合もある)
イ段 さん
ウ段 さん
エ段 はん
オ段 さん(はんも使って良い場合がある)

ン   さん

こういう風に分類しても、書き言葉と話し言葉は違うのでややこしいのです。「ウ」と書いても「オ」と発音する場合があります。例えば「和尚(オショウ)」は「オショオ」と言いますから。でも「和尚はん」ではなくてやっぱり「和尚さん」ですね。

大阪を代表する噺家の名前、笑福亭松鶴も「松鶴はん」ではなくて「松鶴さん」ですよ。それから「ン」にも必ず「さん」が付きます。「旦はん」てな言葉はなくて「旦さん」。もちろん「若旦はん」も×。「坊(ぼん)はん」は「坊(ぼん)さん」、「御寮人(ごりょん)はん」は「御寮人さん」に直してください。

しかし大阪弁はややこしい。うちの国宝の場合です。「ベイチョウはん」ではなくて「ベイチョウさん」です。でも大阪弁特有の使い方で縮める場合がある。これは「はん」なんです。つまり「ベイチョはん」はOKなんです。武蔵坊弁慶も「ベンケイさん」を縮めたら「ベンケはん」と言います。ここらは上方落語の「船弁慶」を聴いてもらったらわかるのですが……。

たいへんややこしいので間違うのも仕方がないと思うのですが、やはり違和感があると私はダメですね。

マスコミ、大企業ももっと勉強してもらわんと。「伊右衛門はん」はあかんで。「伊右衛門さん」と言わなんだら。「おけいはん」ではなくて「おけいさん」ですがな。……と恨みが京阪電車に来る。これも微妙で「おけはん」ならかまへんのですよ。……はあ、ややこしい。

「じゃりン子チエ」も大好きやけど「おとうはん」はあかん。「おとうさん」ですよ。「おとっつぁん」でもいい。「おかあはん」は「おかはん」なら許せます。

言葉はどんどん変わってます。時代とともに変化するものです。「ら抜き」も半ば当たり前になってきてます。けど私は許しません。少なくとも落語に使ってはダメです。これからも片意地に言います。注意します。オレが言わなんだら誰が言うねん?

あ、この「さん」と「はん」の区別はうちの国宝の受け売りですよ。詳しくは創元社刊「米朝落語全集第六巻」のおしまいのほうをご覧ください。やっぱりうちの師匠は偉いお人や。イヨウ、ベイチョはん!


☆追記☆ 2015/3/15

昨日の新聞広告を見て「謙信はん」が目についたので、TwitterとFacebookに載せました。皆さん、なんでもかんでも「はん」を付けたら大阪弁に、関西弁になると思てはりますね。違うのに。こういう間違いを世間に晒してほしくない。マスコミにもチェックできる人は居ないのですか?

これは3年前、メルマガ「米二情報」に書いたもののコピペです。ブログのコメントに「米二はん」と書かれたそのお返事のつもりでしたが、何にでも「はん」を付ける風潮は今やもう止められないでしょうね。一噺家がなんぼ言うても無駄なことはわかってるけど、それでも言い続けますわ。

なお、うちの国宝の小論「『さん』と『はん』」ですが、創元社「米朝落語全集」の増補改訂版では第八巻に収録されています。

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この記事へのコメント

沖縄電鉄社長
2015年03月15日 09:15
初めまして。沖縄に住んでいる者です。
「伊右衛門『はん』」について、以前サントリーに問い合わせたことがあります。
「~ア、エ、オ段の語につくと『はん』、~イ、ウ段につくと『さん』になりやすいという傾向はございますが、全く無いわけではなく、京都弁指導の先生のもと、コマーシャルでは『はん』を使用した」との回答でした。
ジーやん
2015年03月15日 11:47
そうでしたか。ではその京都弁指導者を吊るし上げんといけませんなあ。サントリーも関西の会社やのにねえ。
ちりとてちん
2015年03月15日 20:03
「さん」と言うてても、発音がホワンとしてたら「はん」に聞こえるんかもしれませんねぇ。
鴨ネギ
2015年03月15日 22:54
今日は気になる正確にいうとなんや引っかかる言い方を。
作詞風に言うと、今わたしが気になることとでも言いましょか。
・~を行う←する、でええのとちゃうのん?
・なのでなのでと、乱発しすぎ。
・(少しセンテンスが長いとまとめきれずに)~なのですが~、○○させていただいてうんぬん~整理されてへんから論点がボケるわ、気ぃつけんかい!
・何にもあげるあげるとつけすぎ。皮をむいてあげる、なんてね。
・二重言葉が多い。例えば書き留めた、でええのに書き留め終えたなんていらん言葉をつけたりしよる。アホか。
・~させていただくの乱発ぶり。

あ~あ、言うてたらキリがないですね。
今夜はこんなんでよろしかったでしょうか。

伊右衛門
2015年03月20日 03:13
米朝師匠が崩御されましたね。上方落語の中興の祖として上方落語の歴史の一部となられたんですね。今頃は「なんで自殺したんや!!」とか「わしの名前であちこち電話してたらしいな」なんて弟子たちに小言を言ってるんでしょうね。

江戸は円朝が永久欠番。もちろん上方は米朝を永久欠番にして欲しい。
奇しくもどちらの名前にも「朝」が付いております。これも偶然では無いのかも知れませんね。

もしもざ○ばが「わしが米朝継ぐんや~」とアホなこと言い出したら、止めて下さいね。でないと関西人一同が暴動を起こすでしょう。ざ○ばは桂米昼くらいを名乗ってれば良いと思います。

米二さんお気を落とさないようにして下さい。

直弟子一同+南光師匠ででざ○ばを止めて下さいね。
ちりとてちん
2015年03月20日 17:43
あの~、こんな時に不謹慎やと叱られると思いますが、米朝師匠を「剥製」にして、永久保存にしていただけませんか?

昨晩から、涙が止まりません。