囃子場の一大事

昨日の「こころ坂・楽々落語会」でのこと。トリの演目は「けんげしゃ茶屋」で、ゲンの悪い嫌な旦那を、そこは桂米二の本領発揮で、楽しく楽しく演じておりました。サゲまであと少しという時、舞台袖の囃子場で異変が……。
音がするんです。ガタンゴトンという感じでもない。スーッという感じでもない。何かあったらしい。物が倒れたのか? 人が倒れたのか? もう気になって気になって……。
久しぶりの「けんげしゃ茶屋」ですから、頼りないところもあるんです。囃子場に気を取られて出てこない言葉がありました。そこはもうスルーして、あってもなかってもストーリーには差し支えないから、あとはすっ飛ばしてサゲまで。
「またしくじりよった」
ドンドンとサゲ囃子が入って、あとは抽選会。思わず袖に向かって言いましたよ。
「何があったのー?」
「大事件がありました」
と米輝君。でもそのあとのことは言うてくれないのです。ま、ええか。そのまま抽選会に進みました。これも済んでお開き。バレ太鼓がドロドロドロドロ……。
楽屋へ戻ってから、もう一ぺん聞いたら、
「ゴキブリが出たんです。それも上から飛び出してきたんです」
これはびっくりするやろねえ。ぞろぞろと這うて出たのならマシですが、いきなりゴキブリが飛んできたら、これは肝をつぶしますわ。米輝君は飛びのいて逃げて行ったそうです。お囃子の鏡ちゃんは三味線を抱えてるので逃げられず、固まってたそうです。雀喜君はその場に居なかった。
あの音は米輝が逃げた音やったんですね。あの大きい体で飛び出したら、音もしますわ。けどみんな、よく声を上げなかったねえ。これ塩鯛君なら「ギャーッ!」と叫んでたんと違う? わたしゃ、ゴキブリが出て、声を上げて逃げ回る彼を見たことがあります。
「で、そのゴキブリはどうなったの?」
「こちらの大将が素手で捕ってくれはりました」
主催の酒谷さんが手づかみで退治してくれはったんですと。男やねえ。しかも手が早い……というと誤解を招くか。とにかく一件落着。私はそのゴキブリを見ることもなかったという訳ですわ。
ご来場のお客様、何の音か分からず、もやもやしたままお帰りになりましたね。あれはゴキブリの仕業だったことをご報告いたします。これですっきりしたでしょ? でも客席でなくて良かったわ。客席へ出てたら、落語はメチャメチャになるところでした。
酒谷さん、退治していただいてありがとうございます。でもこれから酒谷さんとの握手は遠慮しときますね。普段からせえへんけど。
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