7日間ブックカバーチャレンジ中日

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四日目、中日です。中日なので私にとって特別な本をご紹介します。團伊玖磨著「パイプのけむり」。

この「パイプのけむり」は作曲家の團伊玖磨先生が、1964年から2000年までの長期にわたり連載されたエッセイを纏めた本です。単行本は正、続、続々、又、又々、まだ、まだまだ、も一つ、なお、なおなお……という名がつけられ、なんと27冊も出ました。

共同通信の「本の森」という連載コラムに、この「パイプのけむり」について書かせてもらったことがあります。これは神戸新聞ですが、その切り抜きをご覧ください。

20170528 神戸新聞 I読書「パイプのけむり」 - コピー.jpg

でもこれは769字しかありません。原文は1,074字あったのです。泣く泣く削って769字にしたのです。でもかなりニュアンスが違います。悔しいので、原文をご紹介いたします。


--ここから原文--

職業欄に「噺家、エッセイスト」と書きたいといつも思っている。新聞に連載を持っていたことがあったから、その時は書いてもいいと思ったが、今は連載がないので残念ながら「エッセイスト」とは書けないでいる。

シリーズで出ていた「パイプのけむり」に出合ったのは、高校生の頃だったと記憶する。父が読んでいたのを借りて読んだのだ。その父は義弟からこれを借りていた。つまり、私は血のつながらない叔父から借りたことになる。でもそのことを叔父は知らない。少し後ろめたかったが、とにかく読んだ。面白かった。

まず團伊玖磨という人は博識だと思った。理屈言いだと思った。変人とも思った。私が共感したのは理屈言いの部分。私も仲間内では理屈言いで通っていて「リクやん」という仇名まで頂戴している。

アイスクリームが嫌いで、嫌いなのに食べて嫌な気分になるのが趣味だとおっしゃる。現に食べて嫌な気分を楽しんでおられる。これなど、理屈言いの私が感服する理屈だ。なかなか実践できない。他に梅干し、蛸酢も大嫌いなのに、友人の家で趣味だからたらふく食べて、逆に大好物と誤解されて……。ま、あとは自分で読んで欲しい。

若い頃から総入れ歯だった。お住まいの横須賀から東京へは横須賀線のグリーン車で通っておられた。中で騒ぐ子どもがいて、静かにさせるために入れ歯をはずして鬼のような顔を作り、それを見せた。その子は怖がって泣き出し、親に告げた。親がこちらを向いた時には元の顔に戻すのだ。私も入れ歯になったらやりたいと思ったが、まだ自前の歯なので実践できずにいる。

またそのことは私の横須賀線への憧れにつながる。関西も国鉄の同じ型の電車が走っていたが、塗装が違った。こちらは緑とオレンジの湘南色、横須賀線は青とクリームの横須賀色。滅多に見ることのない横須賀色はかっこよかった。

実はごく最近、逗子から品川まで横須賀線のグリーン車に乗る機会があった。やっと團先生と同じことができたとほくそえんでいた。しかし、そこには騒ぐ子どもはいなくて、騒ぐおばちゃんが座っていた。

その「パイプのけむり」は叔父のところへすべて返却され、私は長いこと目にすることがなかった。でも心のどこかにそれは残っていて、自分がエッセイのようなものを書き出した時に、むくむくっと蘇ってきた。ああいう風に書きたいと。

で、この「本の森」に書くために今、手に入るものを何冊か買った。借りたのではなくて買ったのだ。今頃かい!?

何十年ぶりかで読み返してみてよくわかった。私の書いたものなど足元にも及ばない。そんな訳で、私は職業欄に「噺家」とだけ書く決心をした。

--原文ここまで--


7日間ブックカバーチャレンジの中日は手抜きでお届けしました。

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